コレクション: 辛 明範(Myong-bom Shin)

辛 明範(シン・ミョンボム、Myong-bom Shin、1942年生まれ)は、韓国出身の画家です。1967年に弘益大学校美術大学の東洋画科を卒業し、渡米後の1974年にはサンフランシスコ・アート・インスティテュート大学院を修了しました。韓国の伝統的な絵画と西洋の現代美術の双方を学び、独自の表現を追求してきました。

1960年代には韓国の国展(大韓民国美術展覧会)で入選を重ね、1966年には特選を受賞。アメリカではサンフランシスコを中心に活動し、1977年には現地の韓国人美術家の団体設立に携わり、1982年にはサンフランシスコ地域の韓国人美術家協会会長を務めました。また、1989年には母校の弘益大学校で絵画を教えています。

辛明範の作品で特に特徴的なのは、キャンバスに土を用いた独自の技法です。アメリカ留学中、故郷の韓国への郷愁から土の匂いや温もりを懐かしく感じたことが、制作のきっかけとなりました。土を塗り重ねた画面にアクリル絵具などで描くことで、独特の質感と温かみのある色彩を生み出しています。人物や動物、鳥、魚、太陽や月、草花などを題材に、韓国の民画を思わせる素朴な造形と、西洋の現代絵画の表現を組み合わせています。

こうした作品には、自然と人間のつながりや、土から生まれ土へと還る生命の循環といったテーマも込められています。形を大胆に簡略化した人物や動物、自由な線描、土の質感を生かした画面構成によって、親しみやすさと独自性を備えた世界を築いています。

1970年代から韓国やアメリカで個展を開催し、1984年にはロサンゼルスの韓国文化院、1999年にはソウルのガナアートセンターなどで作品を発表しました。日本でも1991年と1994年に東京で個展を開催しています。その後もニューヨークやソウルなどで展覧会を重ね、韓国とアメリカを中心に長年活動を続けてきました。

作品は韓国国立現代美術館や成谷美術館などに収蔵されており、2006年と2007年にはニューヨークのクリスティーズにも作品が出品・落札されています。